納棺師
遺族が故人を安心して見送ることができるよう、遺体に処置を施して保全をし、身支度を整え棺に納める。
仕事内容
納棺とは遺体を棺に納めることを意味しているが、納棺師の仕事はそれだけに留まらない。まず、葬儀まで遺体を安定した状態に保つため、死後処置を行う。遺体に点滴等医療器具による傷跡や褥瘡(じょくそう)等がないか全身を確認する。傷跡がある場合は、医療用のテーピングテープ等を用いて塞ぐ。遺体から血液などの体液が漏れ出たり死臭が発生したりすることを防ぐため、遺体の鼻腔内等に脱脂綿をつめる。その後、アルコール消毒液を含んだ脱脂綿で遺体を拭き、清潔な状態にする。そして、死後硬直をほぐし、故人が安らかに眠っているように見えるよう表情を整える。
次に、遺体の身支度を整える。一般的に死化粧と呼ばれるものがこれにあたる。遺族の要望に沿って髪型やひげを整えたり、肌の状態がよく見えるように化粧を施したりする。この施術は、遺族と一緒に行うことも近年多くなっている。身支度を整えたら、着付けを行う。遺族の意向や地域の風習、宗教や宗派のルールに合った衣装を着付ける。着付けの際には、火葬が可能な衣装であるか等、葬儀社の担当者と相談しながら、必要に応じて金具を取り外す等衣装の調整も行う。なお、遺体の着付けを先に行い、その後に身支度を整える場合もある。
最後に、遺体を棺に納め、安置する。
納棺師の多くは納棺業を専門とする事業所に勤務している。業務は、葬儀社からの依頼を受けて行うことが多い。1件の現場につき2人以上の納棺師が一緒に業務を行うことが多いが、事業所や地域によっては納棺師一人で対応する場合もある。
納棺が終了した後には、葬儀社への報告書や社内用の報告書を作成する。社内の報告書には、遺体のどの箇所にどのような処置を行ったか詳細を記録し、情報共有をしている。これらを共有することで、仮に葬儀までの間に遺体に変化が生じ、担当した納棺師がすぐに対応できないような場合でも、他の納棺師が速やかに対応することができる。
事業所によっては、納棺の前に遺族の意向を受けて湯灌を実施している。その場合は現場に湯灌師が同行することが多いが、事業所によっては納棺師が湯灌師を兼ねている場合もある。
また、事業所によっては、遺体の復元に関する技術を持つ納棺師が警察等の要請を受け、全国で発生した災害や事故の現場に赴き、損傷が著しい遺体の復元業務に従事することがある。
熟練の納棺師の中には、葬祭業を専攻する専門学校の講師をしたり、病院や介護施設、他の葬祭事業者からの依頼を受け、納棺や死後処置に関する講習の講師を務めたりする人もいる。
納棺師が対面する遺体は必ずしもきれいな状態とは限らない。亡くなってから時間が経っていたり、事故や災害によって損傷が著しい遺体の場合もある。そのような場合でも、生前の故人らしさを感じられる安らかな表情に整えるのは技術的にも苦労する点である。一方、納棺師はそういった技術だけを提供するのではなく、遺族が安心して故人との最後の別れが迎えられるよう、遺族の心情に寄り添うことも求められている。また、遺族にとって大切な故人の身体に施術を行うため失敗は許されず、常に緊張感が伴う仕事でもある。しかしながら、施術後に遺族から感謝を伝えられた時や遺族の安心した表情を見た時には、大きなやりがいを感じる。
◇よく使う道具、機材、情報技術
ピンセット、脱脂綿、医療用テーピングテープ、防水シーツ、メイク道具、爪切り、はさみ
労働条件の特徴
1つの営業所に配属される納棺師の人数は、地域や事業規模によっても異なる。複数の地域に営業所を有する事業所であっても、地域によって葬儀の風習が異なることが多いため、営業所間の異動や全国転勤はほとんどない。女性が多く活躍している。就業形態は正社員がほとんどである。
勤務は日勤であるが、営業所の営業時間に合わせて早番や遅番を交代で担当することもある。土日も営業している事業所では、シフト制を採用している。納棺師として一定の技術を身に付けた後に、独立開業をしたりフリーランスとして業務を請け負ったりすることも可能である。
近年、核家族化や経済的理由等から葬儀の規模の縮小や簡素化の傾向が続いている。納棺師による施術は必ずしも葬儀社が提供する葬儀プランに含まれてはいないため、このような時勢の影響は少なからずみられるものの、その一方で、最後に故人に対して精一杯のことをして見送りたいという遺族の強い思いから、納棺師による施術を希望するケースは年々増加している。納棺師は技術だけでなく、その社会的役割の重要性も認識されつつあり、今後ますます社会に必要とされる職業である。
納棺師の年収
納棺師の平均年収は403万円(令和7年賃金構造基本統計調査「その他のサービス職業従事者」・全国)。中央値の目安は374万円、年収レンジは290〜657万円、上位10%は572万円です。
あなたの年収は、同じ年代の納棺師の中で上位何%?
入れた年齢・年収は送信・保存しません(この画面の中だけで計算)。同年代の分布は、この職業の年収の分布と年代別の年収(賃金構造基本統計調査の年齢による差から推計)から出しています。
納棺師の時給1,928円は、最低賃金(全国加重平均1,177円・2026年度)の1.6倍です。都道府県別の最低賃金 →
年代別の年収推定
平均年収と平均年齢(43.4歳)から、賃金構造基本統計調査の年齢階級別賃金の形に合わせて推計。
経験年数別の年収推定
雇用形態別の年収推定
年収の推移(統計の年ごと)
| 調査年 | 年収 | 就業者数 | 有効求人倍率 | 求人賃金(月額) |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 386万円 | — | — | — |
| 2022年 | 382万円 | — | — | — |
| 2023年 | 394万円 | — | 1.72倍 | 22万円 |
| 2024年 | 396万円 | — | 1.71倍 | 22.7万円 |
| 2025年 | 403万円 | — | 1.63倍 | 23.6万円 |
納棺師の将来予想年収(3年後・5年後・10年後)推定
現在403万円 → 3年後 437万円 → 5年後 462万円 → 10年後 529万円(10年後の予想レンジ 455〜615万円)。年率の伸びは+2.8%と見ています。
年率の伸びの内訳
将来予想年収 = 現在の年収 ×(1+年率の伸び)^年数。年率の伸びは、賃金の基本の伸び率に、有効求人倍率・求人賃金の前年差・AI代替リスクを足し引きして職業ごとに決めています。予測は保証ではありません。計算のしかた →
納棺師の将来性スコア
各要素は全職業の中での順位(0〜100)。配点:求人需要25・賃金の勢い15・年収水準15・AI耐性25・人手不足10・参入障壁10。
納棺師のAI代替リスク
計算中です。
AIによる仕事内容の変化
解説は準備中です。
AI代替リスクは、job tag の調査データ(仕事の性質・仕事の内容・スキル・知識)から、AI・ソフトウェアに置き換わりやすい要素と置き換わりにくい要素を比べて、全職業の中での相対的な位置を 0〜100% にした推定値です。考えかた →
納棺師の求人需要
有効求人倍率が1倍を超えると、求職者より求人の方が多い(人手不足)状態です。求人数の予測は、求人倍率・求人賃金の勢い・AI代替リスクからの推定です。
アメリカでは:エンバーマー(遺体衛生保全士)の年収・将来性
納棺師に当たるアメリカの職業「エンバーマー(遺体衛生保全士)」(米国の職業分類 39-4011)の年収の中央値は約924万円($58,780・1ドル157.25円で換算)。日本の平均年収403万円の2.3倍です。
| 日本:納棺師 | アメリカ:エンバーマー(遺体衛生保全士) | |
|---|---|---|
| 年収(日本=平均・米国=中央値) | 403万円 | 924万円 $58,780 |
| 上位10% | 572万円 | 1,220万円 $77,570 |
| 10年後の予想年収 | 529万円 | 1,242万円 $79,000 |
| 将来性スコア | 51 | 57 |
| AI代替リスク | — | 28% 低い |
| 求人需要 | 求人倍率 1.63倍 | 雇用の増減予測 +0.7% 2025–35・BLS |
| 就業者数 | — | 3,890人 |
| 時給(平均) | 1,928円 最低賃金の1.6倍 | 4,403円 $28.00 連邦最低賃金の3.9倍 |
| 最低賃金 | 1,177円 全国加重平均・2026年度 | 1,140円 連邦 $7.25。州ごとにもっと高い額あり |
| 入職に必要な学歴(米国) | — | 準学士号(短大卒) |
米国のデータは BLS(労働統計局)の OEWS と雇用予測、O*NET。米国の金額は1ドル157.25円で円に換算(為替は毎日更新)。日本は平均値・米国は中央値で、調査の職業の範囲も違うため、目安として見てください。アメリカの職業のくわしいデータ(英語)→
世界では:サービス・販売職の平均月収を国別に比べる
納棺師は国際標準職業分類で「サービス・販売職」に入ります。133か国・地域のサービス・販売職の平均月収を円に直すと、日本は月28.5万円で28位、1位はルクセンブルクの月82.4万円です。アメリカは月58.2万円で日本の2.0倍。物価の違いをならした購買力平価では、日本は24位です。
「サービス・販売職」全体の平均で、納棺師だけの値ではありません(販売店員、介護職員、調理人・接客、理容・美容師、警備員・警察官・消防官など。)。日本は賃金構造基本統計調査のきまって支給する現金給与額(賞与を含まない月の額。賞与込みの月平均は32.5万円)、ほかの国は ILO の統計(各国の最新年)を今日の為替で円に換算。サービス・販売職の世界ランキングを全部見る →
納棺師に必要なスキル・資格
必要資格
関連する資格はありません(資格が無くても就ける職業です)。
納棺師になるには(未経験からの方法)
就くには(job tag)
入職にあたって必要な資格はないが、自動車で仕事現場に移動することが多いため普通自動車免許の保有が望ましい。求人情報はハローワークや民間の求人サイトへの掲載が中心であり、複数の地域に営業所をもつ事業所の場合、営業所ごとに採用を行っていることも多い。
入職後の研修は先輩社員による現場でのOJTが中心である。着付けのように営業所で練習が可能な技術もあるが、多くの処置技術は事前に練習することが難しいため、先輩社員から現場で学び、身に付けていくことになる。研修期間は入職者の習熟度によって幅があるが、おおよそ半年から1年程度で、新卒の場合はOJTの前に、ビジネスマナー等を身に付けるグループ研修を実施している事業所もある。
多くの納棺師は納棺業を専門とする業者に勤めている。納棺師として募集されている場合は、入職後すぐに納棺師として配置され、研修を受ける。昇給や昇進機会は事業所の規定による。現場で経験を積んだのち、現場の責任者やエリアマネージャー、営業所や本社の管理職に昇進する道もある。
遺族にとって大切な故人を見送る場に立ち会うことから、清潔感のある身だしなみや礼儀作法が身に付いていること、そして、遺族や葬儀社の担当者と円滑なやり取りを行うためのコミュニケーション能力を有していることが望ましい。また、遺族の悲しみに寄り添うことができる共感性をもちながらも、プロとして現場ごとに気持ちを切り替えることも求められる。
納棺師のキャリアルートと年収アップ方法
解説は準備中です。